配偶者が宗教活動に熱心すぎる、配偶者と宗教活動をめぐり対立しているなどの理由で、離婚問題に発展することがあります。
このページでは、①配偶者の宗教活動を理由に離婚できるか?②配偶者の宗教活動による離婚の場合に慰謝料請求できるか?③配偶者の宗教活動は親権の判断に影響するか?という問題について、ご説明させていただきます。

配偶者の宗教活動を理由に離婚できるか?

配偶者の宗教活動を理由とする離婚は認められるのでしょうか?
この点、離婚協議や離婚調停において夫婦間で離婚に合意できるのであれば、離婚を成立させることが可能です。
しかし、夫婦間で離婚の合意ができずに離婚訴訟を提起する場合、離婚を認める判決を得るためには、民法770条1項に定める法律上の離婚原因に該当することが必要です。

【法律上の離婚原因】
①配偶者に不貞な行為があったとき
②配偶者から悪意で遺棄されたとき
③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

配偶者の宗教活動を理由とする離婚は、⑤の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する可能性があります。
ただし、憲法により信教の自由が保障されているため(憲法20条)、単に配偶者が自分と異なる宗教を信仰しているとか、配偶者の宗教活動が自分にとって不快であることのみを理由に、法律上の離婚原因があると認めることはできません。
夫婦関係を破たんさせるような事情がある場合に限り、⑤の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するものと考えられます。

また、配偶者が宗教活動にのめり込み、生活費を渡さないなど、家庭をまったく顧みなくなった場合には、②の「配偶者から悪意で遺棄されたとき」に該当することもあります。
ただし、②の「悪意の遺棄」に該当するためには、夫婦の同居・協力・扶助義務の違反行為が夫婦関係を積極的に破たんさせる意図のもとに行われたことの立証が必要です。

以下のような場合には、⑤の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当すると判断できる可能性があるでしょう。

配偶者が宗教活動のために多額の寄付をし、家族の家計を成り立たなくさせた。
配偶者が宗教活動にのめり込み、家に帰ってこなくなった。
配偶者が結婚後に宗教団体に入信し、子どもに宗教団体の教義・行事参加を強要するようになり、夫婦間の深刻な対立が発生した。
配偶者が結婚後に宗教団体に入信し、仏式の葬儀・法事や祭祀を拒否するようになり、夫婦間の深刻な対立が発生した。
自分は配偶者に信仰する宗教を打ち明けていたのに対し、配偶者が自分とは異なる宗教を信仰していることを隠して結婚したために、結婚後に宗教活動をめぐる夫婦間の深刻な対立が発生した。

信教の自由は憲法上の権利ではありますが、夫婦として共同生活を送る以上は無制限ではないのは当然です。
上記のような場合には、家庭裁判所が宗教活動を原因とする夫婦関係の破たんがあったものと判断し、離婚を認める判決を下す可能性があるのです。

配偶者の宗教活動による離婚の場合に慰謝料請求できるか?

配偶者の宗教活動を理由に離婚をする場合、慰謝料を請求することはできるのでしょうか?

この点、憲法により信教の自由が保障されていることとの関係上、単に配偶者が自分と異なる宗教を信仰しているとか、配偶者の宗教活動が自分にとって不快であることのみを理由に、慰謝料を請求することはできないと考えられます。

しかし、配偶者が夫婦の同居義務や協力・扶助義務に違反する程度にまで宗教活動にのめり込み、夫婦関係を破たんさせるに至ったと評価できる場合には、慰謝料の請求が認められる可能性があります。
また、配偶者が結婚するまで宗教を信仰していることを隠しており、結婚後にそれが発覚して夫婦間の深刻な対立が発生したような場合にも、慰謝料の請求が認められる可能性があります。

配偶者の宗教活動は親権の判断に影響するか?

配偶者の宗教活動を理由に離婚をする場合、配偶者の宗教活動は親権の判断に影響があるのでしょうか?

この点、配偶者の宗教活動が子どもの親権の判断において配偶者にとって不利に働く(自分の方が子どもの親権の獲得において有利である)とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実際には、子どもの親権の判断において、配偶者の宗教活動自体が有利あるいは不利に働くということはありません。

子どもの親権の判断では、これまで夫婦のどちらが主に子どもの監護(育児)を担ってきたかという点が重視され、子どもが中学生以上など一定の年齢に達している場合には、子どもの意思も尊重されます。
また、子どもが幼ければ幼いほど母親が優先される傾向があり、子どもが複数いる場合にはできる限り兄弟姉妹を離れ離れにしないという原則があります。
その他、親の状況として、収入・資産などの経済状況、監護の意思・能力、監護補助者(育児を補助してくれる親族など)の有無なども考慮されます。

このような判断基準からすれば、配偶者の宗教活動自体が親権の獲得に直ちに影響を与えるものではないのです。
ただし、配偶者が宗教活動にのめり込むあまりに育児放棄をしたとか、配偶者が宗教の名のもとに子どもを虐待したなどの事情がある場合には、親権の判断において配偶者にとって不利(自分にとって有利)な事情として考慮されるでしょう。

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