養育費・婚姻費用の支払義務がいつから発生するのか?が問題となることがあります。
特に、離婚時・別居時に養育費・婚姻費用の取り決めをしなかった場合に、離婚時・別居時にさかのぼって過去の養育費・婚姻費用の請求をすることができるのか?というご質問をいただくことが少なくありません。
このような問題について、以下で解説させていただきます。
1 養育費の支払始期
養育費の支払始期(いつから支払義務が発生するか?)については、以下のように考えられています。
(1)離婚時に養育費の取り決めをする場合
離婚時に養育費の取り決めをする場合には、養育費の支払始期は離婚成立の時点からとなります。
調停の成立・裁判における和解の成立の場合には調停・和解の成立時点からとされ、判決・審判による離婚の場合には確定時点からとされます。
(2)離婚時に養育費の取り決めがなく、離婚後に養育費を請求する場合
離婚時に養育費の取り決めがなく、離婚後に養育費を請求する場合には、養育費の支払始期は請求のあった時点となります。
離婚後に養育費請求の調停を行う場合には、調停申立時が養育費の支払始期とされることが多いでしょう。
ただし、調停の申立前に養育費の請求を行っている場合には、その請求を行った時点が支払始期となります。
その請求が口頭で行われた場合には後々請求の事実の有無が争いになることがありますので、請求する側としては内容証明郵便等の証拠に残る形で請求を行うのがよいでしょう。
また、離婚時から調停申立時・請求時までの分の養育費をさかのぼって請求できるか?については、相手方が支払に応じるのであれば支払ってもらうことができます。
しかし、相手方が請求を拒否した場合には、調停申立時・請求時より前の分の養育費の支払請求は認められないと考えられています。
2 婚姻費用の支払始期
婚姻費用の支払始期(いつから支払義務が発生するか?)については、以下のように考えられています。
(1)別居時に婚姻費用の取り決めをする場合
別居時に婚姻費用の取り決めをする場合には、婚姻費用の支払始期は別居の時点からとなります。
しかし、実際には婚姻費用の取り決めをしないままに別居に至る例の方が多いと思われます。
(2)別居時に婚姻費用の取り決めがなく、別居後に婚姻費用を請求する場合
別居時に婚姻費用の取り決めをしておらず、別居後に婚姻費用を請求する場合には、婚姻費用の支払始期は請求のあった時点となります。
別居後に婚姻費用分担請求の調停を行う場合には、調停申立時が婚姻費用の支払始期とされることが多いと考えられます。
ただし、調停申立前に婚姻費用の請求を行っている場合には、その請求を行った時点が支払始期とされます。
その請求が口頭で行われた場合には後々請求の事実の有無が争いになることがありますので、請求する側としては内容証明郵便等の証拠に残る形で請求を行うことをお勧めいたします。
また、別居時から調停申立時・請求時までの分の婚姻費用をさかのぼって請求できるか?については、相手方が支払に応じてくるのであれば、支払ってもらうことが可能です。
しかし、相手方が請求を拒否した場合には、調停申立時・請求時より前の分の婚姻費用をさかのぼって請求することは認められないと考えられます。
なお、別居後に婚姻費用を支払っていない期間があることは財産分与において考慮され、支払っていない期間分の一部が財産分与額に加算される可能性があります。
算定表についてはこちらもご覧下さい
●養育費・婚姻費用の算定表について
●養育費の標準算定方式による計算
●婚姻費用の標準算定方式による計算
●自営業者の養育費・婚姻費用の計算
●年金受給者の養育費・婚姻費用の計算
●家賃収入や配当収入がある場合の養育費・婚姻費用の計算
●養育費・婚姻費用の算定表にないタイプの場合について
●義務者の年収が2000万円以上の場合の養育費・婚姻費用
●養育費・婚姻費用の特別費用について
●養育費・婚姻費用の支払始期(いつから支払義務が発生するか?)
●養育費の支払終期(何歳まで支払うのか?大学等に進学する場合は?就学を終えても無収入・低収入の場合は?)