夫婦が同居中の場合には、児童手当法4条1項1号・4条3項により、生計を維持する程度の高い側の口座に児童手当が振り込まれます。
主に生計を維持する側とは、要するに所得が高い側を意味し、多くの家庭では夫名義の口座に振り込まれることとなるでしょう。
そして、この状態で妻が夫と別居し、子どもと一緒に暮らすようになると、子どもと生活しているのは妻であるのに、児童手当が夫名義の口座に振り込まれてしまう、という状況になります。
この点、夫婦が別居した場合には、児童手当法4条4項により、子どもと同居する側が児童手当を受給する権利を有することとなります。
したがって、夫婦別居後に子どもと暮らしているのが妻であれば、妻が児童手当の受給権者ということになります。
ただし、児童手当の振込先口座を夫名義の口座から妻名義の口座に変更するためには、児童手当の受給権者の変更を市町村役場に申請する必要があります。
この申請にあたっては、原則として、①夫婦の住民票が別世帯となっていること、②離婚を前提とした別居であること、の2点が要件となります。
そして、②離婚を前提とした別居であることを裏付ける資料の提出が必要であり、例えば次のような資料が考えられます。
□相手方に対する離婚協議の申し入れ文書(弁護士作成の受任通知など)
□離婚調停の事件係属証明書(離婚調停を申し立てたあと、家庭裁判所で取得できます)
□離婚調停の期日呼出状(相手方から離婚調停を申し立てられた場合、家庭裁判所から送付されてきます)
□離婚調停の事件終了証明書(離婚調停が不成立となったあと、家庭裁判所で取得できます)
なお、DV被害を受けている場合には、①夫婦の住民票が別世帯であることは要件とされません。
なぜなら、住民票を移すことにより、加害者に転居先が知られてしまう可能性があるからです。
住民票を移さずに児童手当の受給者となるためには、次の要件を満たす必要があります。
(1)DV被害者・子どもがいずれも、相手方の健康保険の被扶養者となっていないこと。
(2)裁判所から相手方に対して保護命令が発令されていること。または、配偶者暴力相談支援センター等から、「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書」の発行を受けていること。
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●私は夫と別居し、子どもと一緒に暮らしているのですが、児童手当が夫名義の口座に振り込まれています。別居後に夫名義の口座に振り込まれた児童手当の返還を求めることはできますか?