別居時に婚姻費用の取り決めをしなかった場合、婚姻費用の支払を受けられるのは請求を行った時点以降の分となります。
請求を行う以前の分の婚姻費用をさかのぼって請求することはできません。
婚姻費用分担請求の調停を申し立てることにより請求を行う場合には、調停申立時以降の分の婚姻費用の請求を認めるとする取り扱いをすることが多いです。
別居後に婚姻費用分担請求の調停を申し立てるのであれば、なるべく早く調停の申立てを行うことをお勧めいたします。
また、婚姻費用分担請求の調停申立前に請求を行っているのであれば、その請求時点以降の分の婚姻費用の請求が認められます。
ただし、その請求が口頭で行われた場合には、後々、本当に請求を行った事実があるかどうかが争いになることがあります。
そのため、請求する側としては、内容証明郵便等の証拠に残る形で明確に請求を行うのがよいでしょう。
なお、別居後に婚姻費用を支払っていない期間があることは、財産分与の算定において考慮される可能性があります。
これにより、婚姻費用を支払っていない期間分の一部が財産分与額に加算される可能性があります(最高裁判所昭和53年11月14日判決、東京地方裁判所平成12年9月26日判決など)。
【最高裁判所昭和53年11月14日判決】
別居後4年間にわたり支出した生活費・教育関係費1000万円のうち、400万円が財産分与における清算相当額と判断されました。
【東京地方裁判所平成12年9月26日判決】
月額7万円を相当とする47か月分合計329万円の未払い婚姻費用について、財産分与の額を定めるに当たり考慮されました。