離婚を弁護士に依頼する場合にかかる弁護士費用は、自己負担となるのが原則です。
そのため、基本的には、弁護士費用を配偶者に請求することはできません。
なぜなら、離婚の手続において、弁護士に依頼することは法律上強制ではなく、弁護士費用を配偶者に請求できるとする法律上の根拠もないためです。
また、配偶者が一方的に悪いとは限らないにもかかわらず、自分が依頼した弁護士の費用を負担させることの合理性にも、疑問があるでしょう。
ただし、配偶者に離婚原因となる有責な行為があり、慰謝料の支払が発生する場合には、弁護士費用の請求が認められることがあります。
慰謝料を請求するために要した弁護士費用もまた、配偶者の有責な行為による損害であると言い得るため、一定の範囲で賠償請求が可能となることがあるのです。
この場合、離婚訴訟で離婚および慰謝料を認める判決が下されれば、慰謝料の額に対して10%程度の弁護士費用の賠償が命じられるのが通常であり、その限りで請求が可能です。
例えば、慰謝料の額が150万円であれば、弁護士費用は15万円(150万円×10%)に限り請求が認められ、合計165万円の支払命令となります。
10%程度が上限とされるのは、裁判所の実務上の運用です。
実際の弁護士費用は、慰謝料の額に対して10%程度では収まらないのが通常ですが、弁護士費用の全額の請求までは認められません。
弁護士費用の全額の請求までは認められないのは、弁護士費用もまた配偶者の有責な行為による損害であると言い得る一方で、弁護士に依頼することは法律上強制ではない(弁護士費用が法律上不可避とは言えない)ことから、裁判所としては満額までは請求を認めることができない、と考えることができるでしょう。
そして、離婚協議や離婚調停で解決する場合や、離婚訴訟で和解をする場合には、早期の円満解決の観点から、弁護士費用の支払までは行われないのが通常です。