財産分与は、夫婦が協力して築いた財産を離婚時に分配するものです。
結婚期間中に夫婦協力関係のもとに形成された財産の清算ですので、夫婦が別居した時点の財産を基準に財産分与の取り決めをするのが原則です。
なぜなら、一般的に、夫婦が別居した時点をもって、夫婦協力関係がなくなるからです。
財産分与を検討する際には、このような夫婦協力関係の有無がポイントとなります。
裁判例には、結婚から13年後に初度の別居に至り、3年間の別居(その間、夫婦間でほとんど連絡をとることはなく、家計も別であった)を経て同居を再開し、その2年後に再度の別居となった事案で、3年間の初度の別居中は夫婦協力関係がないため、初度の別居中に形成された財産は財産分与の対象から除外する、という判断をしたものがあります。
このように、別居と同居を繰り返した場合、まずは最終的な別居となった時点までに築いた財産を財産分与の基準とすることになります。
そのうえで、夫婦協力関係が途絶えたと評価される別居期間があるのであれば、その別居期間中に形成された財産は財産分与の対象から除外する、という取り扱いになります。
同居期間中に形成された財産と、別居期間中に形成された財産とを明確に区別することが困難な場合には、基本は2分の1ずつとされる財産分与の割合を変更することによりバランスをとる、という判断もあり得るでしょう。
なお、結婚期間中に一時別居の時期があったとしても、別居期間が数日から数か月程度と短い場合や、単身赴任、留学、入院、里帰り出産であり、夫婦の金銭管理の実態等から協力関係が失われたとは言えない場合には、別居期間中に形成された財産も財産分与の対象になるものと考えられます。
もっとも、別居期間中、夫婦それぞれの財産形成に対する貢献度に顕著な差が生じたと言い得るような事情があれば、基本は2分の1ずつとされる財産分与の割合が修正される可能性があります。