1 親権者変更
離婚のときにいったん親権者を定めたものの、その親権者が子どもに対して虐待を行ったり、養育を放棄したりするなど、親権者として問題があるという場合は、親権者を変更する手続をとることができます。
親権者を変更するときは、家庭裁判所に親権者変更の調停(調停委員という中立の立場の人が間に入っての話し合いの手続)または審判(家庭裁判所の判断・決定を求める手続)を申し立てる必要があります。
親同士の話し合いだけで親権者を変更することはできないということです。
親権者変更の調停または審判は、親権者でない親のほか、祖父母や叔父・叔母など、子どもの親族も申し立てることができます。
子どもが虐待を受けているなど、子どもを保護する緊急の必要性がある場合には、親権者変更の調停または審判の申立てと同時に、審判前の保全処分(審判の前の暫定的な処分)として、仮の監護者の指定(暫定的に監護者を指定する処分)、仮の子の引渡し(暫定的に子どもを引き渡す処分)を申し立てることができます。
親権者変更の判断基準はどのようなものか?
親権者の変更が認められるかどうかの判断基準は、子どもの利益のために親権者の変更が必要かどうかという点です。
その判断にあたっては、養育の環境、子どもに対する愛情の度合い、現親権者の養育態度、現親権者の心身の健全性、子どもの年齢、心身の状況、精神状態、子どもの意思などが考慮されます。
もっとも、一度決まった親権者を変更することはそう容易ではありません。
親権者を変更するか否かで争いになった場合、親権者変更が認められるためには、相応の理由が必要とされます。
親権者変更が認められるケースとしては、子どもが親権者から虐待・育児放棄などを受けている場合、一定年齢以上(中学生以上など)の子どもが親権者変更を希望している場合、親権者による養育環境が大きく悪化した場合などがあります。
2 親権の停止・喪失
子どもに対する虐待、養育の放棄、行方不明、労働の強制などの行為があった場合など、親権者が、親権者としての責任を果たさない場合は、親権を停止されたり、喪失したりすることがあります。
このような場合、親権者でない親や子どもの親族、検察官、児童相談所の所長などが、家庭裁判所に親権の停止・喪失の審判を申し立てることができます。
もっとも、子どもに対する虐待などの事実を証明するのは、容易でない場合が多く、親権の停止・喪失が認められるのは難しいのが実情です。
なお、親権の停止・喪失が認められても、親権者でない親が自動的に親権者になるわけではありません。
親権を希望する場合は、家庭裁判所に親権者変更の調停または審判を申し立てる必要があります。