事案内容:離婚
依頼者:60代の男性(無職)
相手方:60代の女性(パート)
結婚歴:37年
子ども:成人済み
1 夫婦の状況
依頼者と妻は、考え方の違いなどから夫婦不仲となり、別居するに至りました。
その際、依頼者は妻に対し離婚を求めましたが、妻は離婚に応じませんでした。
2 相談・依頼のきっかけ
依頼者は、妻との別居直後の時期に、離婚を成立させたいとして、当事務所に相談に来られました。
当事務所の弁護士は、夫婦別居となってまだ間もなく、法律上の離婚原因もないと考えられたことから、妻が離婚を断固拒否した場合には、すぐに離婚をすることは難しいであろうと考えました。
一方で、夫婦が別居状態にある以上、このまま別居状態が4年程度続けば、長期の別居状態にあることをもって、法律上の離婚原因である「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当するであろうと考えられました。
そこで、当事務所の弁護士は、依頼者に対し、すぐに離婚を成立させられるかどうかは分からないが、妻がどこかの段階で離婚に応じてくることもあるし、そうでなくても数年の経過により離婚を成立させられる可能性が高いことなどを説明しました。
そして、依頼者から、離婚に向けた手続対応をご依頼いただくこととなりました。
3 当事務所の活動
当事務所の弁護士は、ご依頼のあとすぐに、妻に対し、離婚の向けた話し合いを求める旨の手紙を送付しました。
しかし、妻からの返答がなかったため、離婚調停を申し立てました。
離婚調停では、妻の側も弁護士を立てて手続に臨んできました。
一方で、妻からは婚姻費用分担請求の調停が申し立てられました。
婚姻費用分担調停は、依頼者と妻との収入状況に照らし、それほどこじれずに金額等に合意し、調停成立となりました。
しかし、離婚調停は、妻の側が高額の慰謝料を支払わなければ離婚に応じないなどと主張して譲らなかったため、不成立で終わりました。
当事務所の弁護士は、離婚調停不成立の時点でも夫婦別居からそれほど期間が経過していなかったことから、一旦はアクションを起こさずに待機し、夫婦別居から4年が近付いた頃に再度離婚調停を申し立て、調停での前向きな話し合いが難しければ離婚訴訟を提起する対応が最善の策であろうと考えました。
そして、依頼者としても、当事務所の弁護士の考えに任せてくれるとのことであったため、時が来るのを待ち、夫婦別居から3年余り経過後に再び離婚調停を申し立てました。
妻は、今回の離婚調停でも、前回と同じ弁護士を立てて、前回と同様に高額の慰謝料を支払わなければ離婚に応じないなどと主張してきました。
当事務所の弁護士は、妻の側の態度を見て調停でのまともな話し合いは無理であろうと判断し、依頼者とも協議のうえで離婚調停を取り下げ、離婚訴訟を提起しました。
4 当事務所が関与した結果
離婚訴訟でも、妻の側には調停の時と同じ弁護士が付きました。
そして、妻の側は、依頼者に相当の特有財産(依頼者が親から相続した財産)があることに目を付け、扶養的財産分与および慰謝料的財産分与と称して3000万円余りの法外な金銭要求をしてきました。
当事務所の弁護士は、扶養的財産分与および慰謝料的財産分与が成立する事案ではないことを丁寧に説明・反論し、少額の清算的財産分与が認められるのみであるとして争いました。
こうして離婚訴訟で争ううちに、夫婦別居の期間は4年を超えました。
その結果、裁判官から「離婚の請求が認められる一方、扶養的財産分与および慰謝料的財産分与は認め難い」という依頼者にとって有利な心証が開示され、裁判上の和解に向けた話し合いとなりました。
そして、妻の側からの3000万円余りの金銭要求に対し、わずか50万円の解決金を支払う条件で合意し、裁判上の和解による離婚を成立させることに成功しました。
5 解決のポイント(所感)
法律上の離婚原因がない場合(あるいは、あるとしても立証が困難な場合)、簡単には離婚を成立させられないかもしれません。
しかし、金銭面などの条件で折り合いを付けられたり、夫婦別居の期間が長期に及んだりすることにより、最終的には離婚を成立させられる事案も多いです。
金銭の支払で折り合うことは、長期の夫婦別居に代わるものとして、時間を買うような意味合いを持ちますが、本件のように法外な条件を吹っかけられる例も見られます。
その場合には、夫婦別居が十分な期間となるまで待つという方針をとるのが現実的な選択肢となるでしょう。
当事務所では、このような長期戦の事案にも粘り強く対応し、解決してきた実績がございます。