事案内容:親権
依頼者:30代の男性(会社員)
相手方:30代の女性(無職)
結婚歴:6年
子ども:1人

1 夫婦の状況

依頼者と相手方(妻)とは、日常の些細なことから喧嘩に発展することが多くなり、最終的に、依頼者と子どもは依頼者の実家で、妻は妻の実家で生活するようになって、夫婦別居となりました。

2 相談・依頼のきっかけ

依頼者は、妻が子どもを連れて家を出て音信不通になるなどの不可解な行動を繰り返すようになっていた時に、一度当事務所にご相談に来られました。
その際に当事務所の弁護士は、生活が安定しないことによる子どもへの悪影響や、連れ去り別居に対する対応などについてアドバイスを行っていました。
その後、夫婦別居となり、離婚の条件について話し合いを続けていましたが、妻から頻繁に連絡が来るようになって、「離婚の条件について妻の話が二転三転している。今後妻が何をしてくるのか分からず不安なので、弁護士に対応をお願いしたい。」、「父親が親権を取るのは難しいと聞いているが、子どもの生活の安定を第一に考えて、本気で親権を主張していきたい。」とのことで、当事務所にご依頼いただくこととなりました。

3 当事務所の活動

当事務所の弁護士から妻に対して連絡をしたところ、妻は、「調停を申し立てたので、その中で話し合いたい」との返答でした。
そして、妻から、子の引き渡し・監護者指定、夫婦関係円満調整の各調停が申し立てられました。(なお、夫婦関係円満調整調停については、第1回期日で、妻が「やはり関係修復は困難なので、離婚することに決めた。」と述べたため、離婚調停に切り替わりました)。
さらに、その後、妻は、弁護士に依頼して、面会交流の調停を申し立てました。
当事務所の弁護士は、子の引き渡し・監護者指定を争うとともに、面会交流については、妻に弁護士がつく前から、高葛藤の状態にあった当事者の間に入って、日程等の連絡窓口になるなどして、適切に実施する調整を行っていました。

数回の期日を重ね、その間に面会交流を継続的に実施する中でも、監護者についての合意はできなかったことから、調査官調査が実施されることとなりました。

家庭訪問調査および交流場面観察、関係機関調査を経て出された調査報告書で、調査官の意見は、監護者を母親とするのが相当であり、引き渡しを認めるべきという結論でした。

残念ながら、父親の養育をほとんど評価していない内容となっていました。
さらに、子どもの健全な情緒発達の観点から、妻の養育の不適切な点や様々な問題行動について、具体的かつ詳細に主張していましたが、調査報告書では、妻側の弁解のみを引用して、「不適切なものではない。」「特に問題があったとは言えない。」と結論付けるというものでした。
全体として、妻側の主張・弁解をそのまま採用し、依頼者の主張はことごとく否定され、十分な検討過程も見られず、余りに偏った、初めから結論ありきと思われるような内容であると考えられました。

そして、調査報告書が出た後の調停期日では、裁判官が入り、このまま争って審判手続に移行しても、最後は調査報告書に沿った審判を出すことになるだろうと伝えられ、依頼者に対して、監護者を妻とすることに同意してはどうかと伝えてきました。
これに対して、当事務所の弁護士は、依頼者とともに、子どもの情緒発達、生活の安定を第一に考えた結果として、調査官の意見には賛同できず、監護者を妻とすることには同意できないと伝えました。
これにより、調停は不成立となって、審判に移行しました。

4 当事務所が関与した結果

そして、当事務所の弁護士は、主張書面において、調査報告書への詳細な反論を展開するとともに、妻の不適切な養育態度や問題行動を、証拠とともに具体的に指摘しました。
特に、妻が子どもに対して大声を上げている場面の録音があり、その内容は、物を叩いて威嚇する、感情のままに叫ぶ、恫喝するなど、親が子を叱るのとは全く異質なものでした。
(なお、録音があることは調停でも伝えていましたが、当然妻側も認めるであろうと考え、その上で調査官も事実として認定するであろうと考えて、依頼者と相談の上で、提出は控えていたものです。)
妻の機嫌が悪いときや、子どもが言うことを聞かないとき、日常的にそのような言動があったと推察するには十分な内容でした。

そうしたところ、こちらの主張書面と証拠(録音)が提出された後の審判期日で、妻は、「監護者の主張はもう止める。」と述べ、さらに、親権者を依頼者とすることに同意するとの意向を伝えてきました。
これにより、親権者を依頼者とすることで合意し、面会交流等の条件を整えた上で、離婚調停が成立しました。

5 解決のポイント(所感)

親権者の判断基準において、「母性優先の基準」というものがあります。
これは、乳幼児は、母の監護養育に委ねることが子の利益に適うという考え方です。
もっとも、最近では、子育てに関する父母の役割分担にも大きな変化があり、養育状況を観察して、母性的な役割を持つ親(母親とは限らない)との関係を重視すべきことが指摘されており、「主たる監護者の基準」などと表現されています。
とはいえ、現在でも、家庭裁判所調査官の報告書を読むと、稀にではありますが、余りに母親側に偏った評価であるとの印象を受けることもあります。

本件の調査報告書は、子の出生から監護養育を担っていた父親の役割を全くといっていいほど評価していない内容でした。
本件の依頼者のように、仕事をしながら、きめ細やかな愛情をもった養育を行っている父親は実際にいます。
本件では、本来であれば、調査官調査の段階で同居中の養育の状況を公平に判断してもらいたいところでしたが、最終的には、妻の不適切な養育態度、問題行動を証拠とともに指摘しつつ、調査報告書への詳細な反論を展開したことで、妻が子の監護者指定、子の引渡し調停を取り下げる形で決着し、無事親権を獲得することとなりました。
依頼者の元で生活をすることが子どもの健全な情緒発達、生活の安定に適うという確信があったからこそ、当事務所の弁護士と依頼者との二人三脚で、父親が親権を獲得するという困難を乗り越えられたと思います。

6 お客様の声

父親が親権を取るのは難しいケースだったと思います。
的確な主張書面の作成、資料の整理等時間があまり無いなかでも迅速に対応して頂きました。
山口先生に依頼して本当に良かったです。
ありがとうございました。

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