夫婦別居の状態が続いており、そろそろ離婚をしたいとお考えの方からご相談をお受けすることがよくあります。
別居状態が一定期間続くと、スムーズに離婚できないことも少なくありません。
このページでは、別居が続いていることによる離婚の注意点や対処法について、ご説明させていただきます。
1 別居状態が続く原因
夫婦別居の状態が続く原因としてよくあるのは、以下のような理由です。
(1)配偶者が離婚に応じてくれない
ご自身が離婚を希望しても、配偶者が離婚を拒否すれば、協議離婚を成立させることはできません。
配偶者に離婚を打診したものの配偶者に離婚を拒否され、法律上の離婚原因に該当する証拠もないため、やむなく別居生活を続けるというケースはよくあります(法律上の離婚原因については、後述します)。
また、不倫・浮気などの離婚原因を作った有責配偶者からの離婚請求は、後述するように相当厳しい要件を満たさなければ通らないため、配偶者がなかなか離婚に応じてくれない結果、何年も別居状態が続くケースも少なくありません。
(2)離婚の条件がまとまらない
夫婦双方が離婚することには合意できているものの、離婚の条件(離婚時における子どもやお金に関する取り決め)の話し合いがまとまらず、夫婦別居の状態が続くケースも多く発生しています。
離婚調停を行ったものの不成立や取下げで終わり、離婚訴訟は起こさないまま別居生活を続けるというケースもあります。
(3)子どもが大きくなるのを待っている
子どもが小さい場合には、子どもが小学校・中学校・高校を卒業したり、成人したりするなどの区切りまで、離婚を待つというケースもよく見られます。
子どもへの影響を考えて離婚を思いとどまったものの、配偶者との同居生活が苦痛になったため、途中で夫婦別居状態となるパターンもあります。
2 別居状態と離婚原因
夫婦の別居状態がどれだけ長く続いても、自然に離婚が成立するというわけではありません。
配偶者と離婚をするためには、基本的には離婚の協議(話し合い)、話し合いがまとまらなければ離婚調停、調停でも解決しなければ離婚訴訟の手続により、離婚の合意または判決を得る必要があります。
ここで、法律で定められた離婚原因の有無が大きな問題となります。
法律上の離婚原因があるのであれば、最終的に離婚訴訟で離婚を認める判決を得ることができますし、離婚協議や離婚調停の段階でも離婚の合意に至りやすくなります。
法律上の離婚原因は、民法770条1項各号に定められており、①配偶者に不貞な行為があったとき(1号)、②配偶者から悪意で遺棄されたとき(2号)、③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき(3号)、④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(4号)、⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(5号)となります。
別居が続いていることとの関係では、一般的におおむね4~5年程度別居していれば、⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(5号)に該当する可能性が高くなります。
ただし、有責配偶者からの離婚請求の場合には、より長期の別居期間や未成年の子どもがいないことなど、相当厳しい要件を満たすことが必要です。
3 別居状態と婚姻費用
夫婦が離婚をせずに別居状態を継続していれば、婚姻費用が発生し続けるという問題があります。
婚姻費用とは、日常の生活費・子どもの養育費・交際費など夫婦が生活していくために必要となる費用のことであり、収入の少ない側は多い側に対して婚姻費用の支払を請求することができます。
夫婦に子どもがいない場合には、離婚をすれば配偶者に対して生活費を支払う必要がなくなりますが、離婚をしない限りは夫婦だけでも婚姻費用を支払い続ける必要があります。
また、夫婦に子どもがいる場合であっても、離婚前の婚姻費用は離婚後の養育費よりも高額になります。
これは、婚姻費用には子どもの養育費に加え、配偶者の生活費が含まれているからです。
そのため、婚姻費用を支払う側としては、離婚をせずに長期間別居を続けることには経済的なデメリットが大きいということになります。
4 別居が続いている場合の対処法
配偶者と別居状態が続いており、なかなか離婚を進められない場合には、次のような対処をとるとよいでしょう。
(1)弁護士を立てて離婚協議を行う
夫婦別居が続いている場合、自分たちで話し合っても解決できないことが少なくありません。
そのような場合には、弁護士に代理交渉を依頼いただくことも検討されるとよいでしょう。
弁護士が間に入ることによって、配偶者としても真剣に話し合う必要があると考え、離婚に向けた協議が前向きに進むようになることも多いものです。
また、弁護士に依頼いただくことにより、離婚の条件についてもしっかりと交渉し、適正な条件による解決が期待できます。
これから離婚協議を行う方は、まずは弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
(2)離婚調停を申し立てる
離婚の話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることとなります。
離婚調停では、調停委員が夫婦間の話し合いを仲介し、合意の成立を目指します。
離婚調停を有利に進めるためには、法的な主張を丁寧に構成し、必要となる証拠資料を提出しなければなりません。
法的な知識と経験が求められ、調停委員を仲介者とする話し合いも簡単ではありませんので、専門家である弁護士のサポートを受けることをお勧めいたします。
(3)離婚訴訟を提起する
離婚調停でも合意が成立しない場合には、家庭裁判所に離婚訴訟を提起することとなります。
離婚訴訟では、配偶者が離婚に同意しなくても、民法770条1項各号に定める法律上の離婚原因があれば、判決で離婚が認められます。
【法律上の離婚原因】
①配偶者に不貞な行為があったとき
②配偶者から悪意で遺棄されたとき
③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
一般的におおむね4~5年程度別居していれば、有責配偶者からの離婚請求の場合を除き、⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるときに該当する可能性が高くなることは前述のとおりです。
その他、⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるときの例として、DV被害やモラハラ被害が挙げられます。
また、離婚訴訟は必ずしも判決によって決着するわけではなく、裁判官を介した和解協議により合意に至り、離婚を成立させられるケースも少なくありません。
離婚訴訟の手続は非常に複雑なものですので、専門家である弁護士に対応をご依頼いただくのがよいでしょう。
5 長期間別居状態が続く場合の注意点
長期間の別居状態の末に離婚をする場合には、以下のようなポイントに注意しなければなりません。
(1)財産分与・慰謝料に関する情報・証拠の収集が困難になる
財産分与を請求するためには、預貯金口座の情報(どの金融機関のどの支店に預貯金を持っているのか)、生命保険契約の情報(どの保険会社の生命保険を契約しているのか)、不動産関係の情報(どのような不動産を所有しているのか)などが必要です。
また、慰謝料を請求する場合には、不倫・浮気やDV・モラハラの証拠が必要となってきます。
しかし、夫婦別居状態が長らく続くと、財産関係の情報や慰謝料関係の証拠を収集するのが困難になってしまいます。
ご自身で財産分与・慰謝料に関する情報・証拠を収集することが困難であれば、お早めに弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
(2)慰謝料請求権が時効にかかるおそれがある
慰謝料の請求には時効があり、不倫・浮気相手に対する請求の権利は、不倫・浮気の事実と不倫・浮気相手を知ってから3年で消滅します。
夫婦別居が続く中で3年が経過すると、不倫・浮気相手に対する慰謝料請求ができなくなってしまいますので、注意が必要です。
(3)別居後の不倫・浮気は慰謝料を請求できない可能性がある
夫婦別居の状態が一定期間継続すると、夫婦関係が破たんしたものとみなされます。
夫婦関係が破たんしたあとに配偶者が異性と交際しても不法行為とならず、慰謝料を請求することはできません。
逆に、夫婦関係が破たんしたあとにご自身が異性と交際しても、慰謝料を支払う必要はありません。
なお、別居してすぐに異性と関係を持つと、まだ夫婦関係の破たんにまでは至っていないと判断され、慰謝料が発生することもありますので、注意が必要です。
6 弁護士にご相談ください
離婚についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、離婚問題に強い弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
当事務所では、離婚に関するご相談・ご依頼を多数お受けしており、解決実績も豊富にございます。
別居が続いていることによる離婚事案の経験・実績も数多くございますので、ぜひ一度、当事務所にご相談いただければと存じます。