配偶者と別居するとなると、引っ越しの費用や別居先での家賃などのお金がかかりますし、子どもがいる場合には生活環境が変わることへの不安もあると思います。
離婚をする場合に、必ずしも先に別居をしなければならないというわけではありません。
確かに、先に別居をしてから離婚の手続を進めるべきケースもあります。
しかし、必ずしも先に別居をすることが望ましいとは限らず、同居したまま離婚を実現できるケースも少なくありません。
このページでは、配偶者と同居したまま離婚の手続を進める方法について、ご説明させていただきます。
1 配偶者と同居したままの離婚の手続
配偶者と同居したままでも、離婚協議、離婚調停、離婚訴訟を行うことは可能です。
(1)離婚協議
配偶者と同居したままで離婚の協議(話し合い)を進める方は数多くいらっしゃいます。
配偶者と直接交渉するのが困難な場合には、弁護士に離婚協議の代理交渉を依頼することにより、スムーズに話し合いを進められることが多いです。
弁護士に依頼する場合であっても、別居をしなければならないというわけではありません。
ただし、配偶者と同居したまま弁護士を入れて交渉するのであれば、家で夫婦同士で話を進めないようにしましょう。
言い争いになると家での居心地が悪くなるかもしれません。
配偶者から直接交渉を持ちかけられても、「弁護士を通して回答する」と答え、取り合わないようにしましょう。
(2)離婚調停
配偶者と同居したまま離婚調停を行うことも可能です。
離婚調停を申し立てれば、家庭裁判所から配偶者に対し、呼出状が郵送されてきます。
配偶者と同居したままの場合には、同じ家でも配偶者宛てに届くことになるため、配偶者がそれを受け取って対応することになり、手続の進行自体には問題がありません。
弁護士に離婚調停の手続を依頼することも、もちろん可能です。
離婚協議の場合と同様に、弁護士を入れたときは、家で配偶者と直接交渉をすることは控えるようにしましょう。
(3)離婚訴訟
配偶者と同居したまま離婚訴訟を行うことも可能です。
離婚訴訟を起こせば、家庭裁判所から訴状や呼出状が同じ家の配偶者宛てに届くことになり、手続の進行自体には問題がないことは離婚調停の場合と同様です。
離婚訴訟の手続は弁護士に対応を依頼することが可能であり、その場合には家で配偶者と直接交渉することは控えましょう。
2 配偶者と同居したまま離婚を進める際の注意点
配偶者と同居したまま離婚を進めることには、次のような注意点があります。
(1)大きなストレスがかかる
揉めている配偶者とひとつ屋根の下に暮らし、日常的に顔を合わせるとなると、大きなストレスを感じる方も多いでしょう。
ストレスに耐えられない場合には、別居を検討することをお勧めいたします。
(2)暴言・暴力(DV)を受ける可能性がある
夫婦同士が離婚で揉めている中で同居を続けると、暴言・暴力(DV)につながるケースもあります。
また、元々暴言・暴力(DV)を受けている場合には、離婚の話を切り出すことで身の危険を招きます。
配偶者との同居の継続が困難であれば、別居を検討することをお勧めいたします。
(3)離婚原因が認められにくくなる
配偶者が離婚を拒否している場合に、配偶者と同居したままであれば、離婚原因が認められにくくなる傾向がありますので、注意が必要です。
夫婦がまだ同居しており、日常的な会話・連絡がある場合には、夫婦関係が破たんしていないと判断される可能性が高まるのです。
これに対し、配偶者と別居すれば、おおむね3年~5年の別居期間で離婚原因ありと判断されるようになり、いつかは必ず離婚できるという状況を作ることができます。
また、別居に至ることで配偶者が観念して離婚に応じてくるというケースも少なくありません。
不倫・浮気や暴力(DV)などの明確な離婚原因を証明できるのでなければ、配偶者が離婚を拒否している場合には、別居した方が有利になるケースが多いのです。
3 配偶者と別居をする際の注意点
今は配偶者と同居していても、これから別居をするという方もいらっしゃると思います。
配偶者と別居をする際には、次のような点に注意するようにしましょう。
(1)証拠・情報の収集
離婚をする際には、離婚原因や財産分与・慰謝料に関する証拠・情報が必要となることが多いです。
しかし、一旦別居をしてしまうと、配偶者の許可なく家に立ち入ることは、できなくなるのが通常です。
そうなれば、不倫・浮気の証拠を集めるのが難しくなりますし、配偶者の預金通帳や保険証券などのコピーを取るなどの情報収集も困難になるでしょう。
そのため、配偶者と別居をする前に、できる限り証拠・情報を収集しておくようにしましょう。
(2)子どもがいる場合の対応
子どもを連れて配偶者と別居をする場合には、保育園・幼稚園の転園、学校の転校が必要となることがあります。
その場合には、別居前に保育園・幼稚園・学校との連絡・調整が必要となります。
また、子どもの健康保険の切り替え、児童手当の振込先口座の変更など、市町村役場での相談・手続が必要です。
後述の持ち出す物品の選別についても、子どもがいる場合には、分量が多くなるでしょう。
(3)持ち出す物品の選別
上記のとおり、一旦別居をしてしまうと、配偶者の許可なく家に立ち入ることは、できなくなるのが通常です。
別居の際に持ち出せる物品の数や量には限りがあるのが通常ですから、持ち出す物品の選別を事前にしっかりと考えておくようにしましょう。
【必ず持ち出す必要がある物品】
ご自身の財布、携帯電話、通帳、銀行印、カード類、生命保険の保険証券、実印、運転免許証・健康保険証など身分証明書、パスポート、仕事などで必要不可欠なもの、捨てられない大事なもの(思い出の品など)、当面の間の衣類、など。
4 配偶者と同居したまま離婚を進めるメリット
配偶者と同居したまま離婚を進めることには、次のようなメリットがあります。
(1)経済的な不安が小さくなる
家を出て配偶者と別居するとなると、引っ越しの費用がかかりますし、別居後の生活費もかかります。
そして、配偶者が十分な生活費(婚姻費用)を支払ってくれるとは限りません。
配偶者と同居したまま離婚を進め、金銭面を含む離婚条件を取り決めたうえで離婚することとすれば、経済的な不安が軽減されるでしょう。
(2)証拠・情報の収集が容易である
配偶者と同居しているうちは、不倫・浮気の証拠や預金通帳や保険証券などの資料も探しやすいでしょう。
ただし、このように証拠・情報の収集が容易であるというのは、配偶者にとっても同じことです。
ご自身の身辺の管理には、十分にご注意いただく必要があるでしょう。
(3)スムーズに離婚できることもある
配偶者と同居したまま離婚を進めることには、大きなストレスを感じる方も多いです。
しかし、これは配偶者にとっても同じことです。
配偶者が大きなストレスを感じ、「早く離婚したい」と思うようになることで、スムーズに離婚できるケースもあります。
5 弁護士にご相談ください
配偶者と同居したまま離婚を有利に進めるためには、法律の専門家である弁護士のサポートがあれば安心です。
当事務所では、離婚問題の解決に注力しており、配偶者と離婚したままの離婚の解決実績も豊富にございます。
配偶者と同居したまま離婚をお考えの方がいらっしゃいましたら、お気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。