離婚協議を開始したり、離婚調停を申し立てたりした際に、離婚を拒否していたり、離婚を前向きにとらえていない配偶者が、友人・知人らに対して自分を誹謗中傷している、SNSに自分の悪口を書いている、といったことを相談されたことが度々あります。
誹謗中傷や悪口は、それ自体が不愉快なものですし、記載内容によっては、法律上こちらの名誉を毀損し、あるいは、侮辱していると評価できるものもあるでしょう。
離婚をするにあたって、このような誹謗中傷や悪口にさらされ続けるのは、精神的に強いストレスであると思いますので、これに対して何らかの対処をする必要があります。
そこで、今回のコラムでは、このような配偶者からの誹謗中傷に対して、どのように対処するか、という問題についてお話しさせていただきます。
ご自身で対処する場合、まずは、配偶者やその親族に対して直接指摘することが考えられますが、配偶者がこれを真摯に受け止めず、誹謗中傷や悪口が止まらない可能性もあります。
次に対処する方法としては、離婚協議書や離婚調停の調書に、お互いに誹謗中傷することを禁止する条項を設けることが考えられます。
もっとも、離婚協議書は、離婚について夫婦が同意した内容で作成することになるため、相手方が誹謗中傷禁止の条項を設けることに応じないような場合、離婚協議書に記載することは難しくなります。
他方で、離婚調停手続を申し立てている場合には、悪口が記載されているSNS上の画面をスクリーンショットし、これを印刷したうえで調停委員に見てもらうことにより、配偶者が誹謗中傷行為をしていると認識してもらうことができます。
それにより、調停委員の仲介のもとに、離婚調停の調停条項に誹謗中傷を禁止する条項をスムーズに設けることができると予想されます。
以上は、あくまでご自身で対応する場合の対処方法となります。
読んでいただいてお分かりいただけるかと思いますが、離婚の協議中や、離婚調停手続中に、配偶者からの誹謗中傷を止める実効的な手段はありません。
一方で、弁護士に依頼した場合には、配偶者に対して、誹謗中傷を止め、投稿された記事に関しては即刻削除するよう警告する書面を送付する(名誉毀損など犯罪に該当するようであれば、犯罪に該当する可能性がある旨明記して警告します。)という対応をとることができます。
また、配偶者が弁護士に依頼していれば、配偶者が立てた弁護士を通じて警告をするなどの手段で、配偶者からの誹謗中傷を止めるように対応していくことが可能です。
また、離婚調停手続ではもちろんのこと、離婚協議書の内容として、相互に誹謗中傷を禁止する条項を設けるよう最大限尽力いたします。
なお、配偶者による誹謗中傷がSNSなどに投稿され、かつ、その内容が、名誉を毀損し、あるいは、侮辱していると評価できる場合の対応としては、投稿に対する削除請求や、発信者情報開示請求といった裁判所の手続を利用していくということも考えられます。
もっとも、裁判手続において、プロバイダ等が積極的に争ってくる場合には、解決までに時間を要することが考えられます。
また、投稿をしているのが配偶者である場合には、配偶者に対して直接警告していく方が、根本的な解決につながることの方が多いと考えられます。
そのため、今回のコラムでは、発信者情報開示請求等については詳細な説明を割愛させていただきます。
当事務所では、単に適正な条件による離婚の成立に向けた業務を行うだけではなく、できる限りお客様の精神的なご負担を軽減することができるよう、配偶者からの誹謗中傷への対処も承っております。
配偶者からの誹謗中傷にお悩みの方は、一度ご相談いただければと思います。
(弁護士・畠山賢次)