財産分与を検討する際に、不動産(土地・建物)の価値(評価額)をどのようにして決めるか?が問題となることがあります。
以下では、財産分与における不動産の評価方法について、ご説明いたします。
1 夫婦間の合意
夫婦間で不動産の価値について合意があるのであれば、その合意内容に従って評価すればよいでしょう。
2 複数の評価基準
夫婦間で合意がなければ、どのような基準で不動産の価値を評価するか?が問題となります。
この点、不動産の価値の評価基準には、次のように、複数のものがあります。
①固定資産評価額
毎年送付されてくる固定資産税の納付書に記載されている不動産の評価額です。
あるいは、市町村役場で取得できる固定資産評価証明書にも、固定資産税評価額が記載されています。
②路線価
相続税を計算するための基準であり、国税庁のホームページで調べることができます。
ただし、路線価は市街地に定められるものであり、郊外などは路線価がありません。
また、路線価は土地に関するものであるため、建物には路線価がありません。
③時価額
実際の不動産市場における取引(売買)金額です。
3 離婚時の時価額
上記のような様々な評価基準のうち、基本的には離婚時における時価額で評価します。
しかし、実務上、固定資産評価額で合意する例も少なくありません。
4 時価額の算定
時価額をどのように算定するか?という問題があります。
この点、複数の不動産会社から査定を取得し、中間的な数値で合意をする方法がとられることも多いです。
不動産の評価方法をめぐり夫婦間で争いになる場合には、不動産鑑定士による鑑定を利用することも考えられます。
しかし、不動産鑑定士の報酬も安くはありませんので、利用する場面は限られてくるでしょう。
5 住宅ローンがある場合
住宅ローンが残っている不動産は、不動産の時価額から住宅ローンの残高を控除した金額が不動産の実質的価値となります。
このような不動産の実質的価値をベースに財産分与の計算を行うこととなります。
例えば、不動産の時価額が2000万円であり、住宅ローンの残高が1000万円なのであれば、不動産の実質的価値は1000万円(2000万円-1000万円)です。
住宅ローンの残高が不動産の時価額を上回る「オーバーローン」の場合の取り扱いは、次のQ&A記事をご参照ください。
●住宅ローンの残高が住宅の時価額を上回るケースでは、財産分与はどのように判断されますか?