事案内容:養育費
依頼者:40代女性(自営業)
相手方:40代男性(給与所得者)
依頼者と相手方との子ども:2人(扶養が必要な子ども:1人)
1 事案の概要
依頼者と相手方は、調停手続で離婚をしました。
調停離婚の際、子どもの養育費について、18歳に達した後最初に迎える3月までの間は、養育費の金額が決められていました。
一方、その後高等教育機関に進学した際の養育費については、その額を改めて別途協議するものと定められていました。
依頼者は、離婚後、2人の子どもの親権を獲得の上、子どもを育て、1人の子どもは、高校卒業後、就職したので、扶養する必要がなくなりました。
もう1人の子どもは、高等学校看護科3年間と看護専攻科2年間の合計5年間の教育を受ける学校に進学しました。
依頼者は、扶養を継続する子どもに関する養育費を相手方に求めましたが、相手方はこれに応じませんでした。
2 相談・依頼のきっかけ
調停離婚の際、依頼者と子ども達は、相手方が所有する建物に、下の子どもが18歳に達した後最初に迎える3月の末日まで住み続けることができることを取り決めていました。
その後、相手方が依頼者に対して、調停離婚の際に取り決めた期限以降も住み続けても良いと述べるも、その後この話を覆し、早期に出ていってほしいと述べるなど話が二転三転しました。
依頼者は、このことや、下の子どもの看護専攻科に関する養育費について、相手方が協議に応じてくれないことに事実上対抗するために、この建物に住み続けていました。
そうしたところ、相手方より、相手方が所有する建物からの退去を求めるとともに、調停離婚の際に取り決められた期限以降退去するまでの賃料相当額の支払を求める訴訟が提起されました。
そのため、この訴訟に関する対応と養育費の支払請求について、ご依頼をお受けしました。
3 当事務所の活動
まず、訴訟については、相手方が調停離婚の取決め後に、取り決めた期限後も住み続けても良いと述べていたこと等を主張して、依頼者が住み続ける権利があることを主張しました。
一方で、相手方との対立関係を深めず早期に和解が成立するよう、積極的に和解内容の提示をしていきました。
次に、養育費については、調停手続を申し立て、学費と養育費の支払を求めました。
しかし、相手方は、こちらの養育費請求の性質が、養育費支払の終期の延長を求めるものであり、調停離婚のときから事情の変更もないので認められないなどと主張し争ってきました。
4 当事務所が関与した結果
まず、訴訟については、依頼者は賃料相当額を支払う義務を負うものの、新たに定める期限までに退去を完了することを条件として、賃料相当額を支払う義務が免除される(期限までに退去すれば、賃料相当額を支払わなくてよい)という内容での和解が成立しました。
その後、依頼者は期限までに相手方が所有する建物から退去し、賃料相当額を支払う義務を免除されました。
次に、養育費については、養育費や学費の負担について、合意に至らなかったため、審判手続に移行しました。
当事務所の弁護士は、本件の養育費の請求は、離婚調停でも想定されていたものであるため、養育費の請求は当然認められる性質のものであることを粘り強く主張しました。
また、相手方が再婚し養子含め子どもが3人いることを踏まえて、緻密に適正な養育費の金額を計算するなどして、依頼者に適正な養育費が支払われるように対応しました。
その結果、相手方が負担すべき学費の一部の金額も考慮されたうえで、以下の内容で相手方に養育費を支払うよう審判がなされました。
具体的には、看護専攻科1年目は月額10万8000円、2年目は月額11万円として、調停申立て時から看護専攻科卒業までの養育費の支払を命ずる審判が出ました。
5 解決のポイント(所感)
養育費に関して、子どもの高校卒業時までは明確に定めていることが多いですが、高校卒業後の高等教育機関に進学した場合の取決めとしては、“別途協議する”などと定められ、具体的な金額が確定していないケースもあります。
子どもが実際に高等教育機関に進学した際、元配偶者が養育費の支払に関する協議に応じてくれない場合には、裁判所の手続を利用するなどして、適切に養育費の請求をしていくことで、支払われるべき養育費の金額を取り決めることができます。