「養育費の支払はいつまでなのか?」というご質問をいただくことが多くあります。
よく聞かれるのは、①何歳まで支払うのか?②大学等に進学した場合は?③就学を終えても無収入・低収入の場合は?というご質問です。
このような養育費の支払終期の問題について、以下でご説明させていただきます。

1 何歳まで支払うのか?

養育費の支払終期は、夫婦間で合意できるのであれば、その合意に従います。
多く見られる取り決めのパターンは、以下の3つです。
・子が20歳に達する月まで
・子が22歳に達した後の最初の3月まで(大学卒業予定時期まで)
・子が18歳に達した後の最初の3月まで(高校卒業予定時期まで)

なお、「高校/大学を卒業するまで」という取り決めをすると、子どもが浪人・留年したときにトラブルになるおそれがありますので、注意が必要です。

問題となるのは、夫婦間で養育費の取り決めをする際に、支払終期について争いになった場合です。

この点、家庭裁判所では、養育費の支払終期は、原則として満20歳に達する日(またはその日の属する月)までと判断されています。
養育費の支払は、子どもが自立すべき時期を終期とするのが原則的な考え方ですが、その時期について、子どもがまだ幼い場合など、特段「〇〇歳まで」と認定すべき事情がない場合には、子どもが自立すべき時期は20歳に達する時と判断されるのです。
なお、令和4年4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられましたが、このように養育費の支払終期を20歳までとする原則に変更はありません。

ただし、20歳未満であっても、例えば子どもが高校を卒業し、自身の生活費を賄うだけの収入を得られるようになった場合には、養育費の支払義務は終了すると考えられます。

2 大学に進学する場合は?

例外として、子どもが大学に進学する場合があります。

家庭裁判所では、子どもがすでに大学に進学している場合、子どもの大学進学が決定している場合、子どもに大学進学の意思および能力があり、養育費の支払義務者が子どもの大学進学を承諾している場合には、一般的な大学卒業予定時期である22歳に達した後の最初の3月を、養育費の支払終期であると判断します。

また、子どもがまだ幼いなど、いまだ大学に進学しておらず、大学進学も決定していない場合には、夫婦双方の学歴、経済状況、社会的地位などの事情から、子どもが大学に進学することが合理的と判断される場合には、22歳に達した後の最初の3月を、養育費の支払終期であると判断します。

ただし、当然ながら、子どもが大学に進学するという想定に反し、高校卒業後に進学せずに就職した場合には、高校を卒業した時点で養育費の支払義務は終了すると考えられます。

3 就学を終えても無収入・低収入の場合は?

子どもが高校卒業など就学を終えても無収入・低収入の場合に、養育費の支払義務は続くのか?という問題があります。

この点、就学を終えた子どもに稼働能力が十分にあるにもかかわらず、それに見合った稼働をしないために無収入・低収入の場合には、就学を終えた時点で養育費の支払義務は終了すると考えられます。

一方で、病気・障害のために働くのが難しく無収入である場合や、障害者雇用で職を得たものの低収入である(自身の生活費を賄うだけの収入を得られない)場合には、就学を終えていても20歳程度まで養育費の支払義務が継続すると判断される可能性があります。

ただし、20歳を超えた子どもについては、基本的には自助の原則が妥当すると考えられており、いつまでも養育費の支払義務が続くわけではありません。

4 養育費の支払期間の延長

夫婦が離婚時には養育費の支払終期を「子が20歳に達する月まで」と定めたものの、その後子どもが大学に進学した場合に養育費の支払を大学卒業まで延長できるか?という問題があります。

この問題についても、当事者(父母)間の話し合いで合意ができれば問題がありませんが、話し合いがまとまらない場合の判断基準としては、以下のように考えられています。

まず、養育費を取り決めた時点では、子どもの大学進学が明確ではなかったのであれば、事情変更を理由に養育費の支払期間の延長を求めることができる可能性があります。

そして、養育費の支払期間の延長が認められるためには、父母双方の学歴、経済状況、社会的地位などの事情から、子どもが大学に進学することに合理性があると言えることが必要であると考えられます。

算定表についてはこちらもご覧下さい

●養育費・婚姻費用の算定表について
●養育費の標準算定方式による計算
●婚姻費用の標準算定方式による計算
●自営業者の養育費・婚姻費用の計算
●年金受給者の養育費・婚姻費用の計算
●家賃収入や配当収入がある場合の養育費・婚姻費用の計算
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●義務者の年収が2000万円以上の場合の養育費・婚姻費用
●養育費・婚姻費用の特別費用について
●養育費・婚姻費用の支払始期(いつから支払義務が発生するか?)
●養育費の支払終期(何歳まで支払うのか?大学等に進学する場合は?就学を終えても無収入・低収入の場合は?)