配偶者が統合失調症にかかった場合、夫婦生活を続けることが辛くなり、離婚を考えるケースもあります。
このページでは、統合失調症の配偶者との離婚をお考えの方向けに、知っておいていただきたいことを解説させていただきます。

1 統合失調症とは?

統合失調症とは、思考、感情、行動などをうまくまとめる(統合する)ことができなくなる精神疾患のことを言います。
統合失調症の原因は、はっきりとは解明されておらず、遺伝的要因と環境的要因の両方が関係していると考えられており、脳内の神経伝達物質の機能障害が発症につながるとする説などが提唱されています。
統合失調症の症状には、幻聴(悪口、指示・命令を言われているなどの幻聴)、幻視(あるはずのないものが見える)、妄想(監視されているという被害妄想など)、思考障害(思考が混乱し、考え方に一貫性がなくなる)、無気力、倦怠感、感情の平板化(喜怒哀楽の感情が乏しくなる)など、様々なものがあります。
統合失調症は、10代後半から30代に発症することが多いとされています。

2 統合失調症の配偶者と離婚できるか?

配偶者の統合失調症を理由とする離婚が認められるか?という問題があります。
この点、夫婦双方が離婚に合意できれば、理由はどうあれ、離婚を成立させることができます。
しかし、離婚の協議(話し合い)や調停の段階で合意に至らず、離婚訴訟において離婚を認める判決を得るためには、法律上の離婚原因(民法770条1項)に該当する必要があります。

【法律上の離婚原因】
①不貞行為(不倫・浮気)。
②悪意の遺棄(夫婦間の同居・協力・扶養義務に違反すること)。
③3年以上の生死不明。
④回復の見込みがない強度の精神病。
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由(DV・モラハラの被害、長期間にわたる夫婦別居状態など)。

統合失調症については、上記④の「回復の見込みがない強度の精神病」に該当するかどうか?が問題となります。
この点、「強度の精神病」とは、重度の統合失調症等が原因で、夫婦間の精神的交流が失われ、夫婦関係が形骸化している場合が想定されています。
配偶者の統合失調症が極めて重く、夫婦が精神的なつながりを持ちながら夫婦関係を維持することが不可能なほどの状態に陥っているのであれば、「強度の精神病」に該当する可能性があるでしょう。
しかし、統合失調症の治療は日々進化しており、治療により症状をコントロールすることが可能であると言われています。
そのため、統合失調症は「回復の見込みがない」とまでは言えない状況であり、配偶者が統合失調症であるというだけでは、裁判所が離婚を認めることは難しいと考えられます。

さらに、上記④の「回復の見込みがない強度の精神病」を原因とする離婚請求が認められるためには、病者の今後の療養・生活等について、できる限りの手当てをし、将来的な見通しをつけておく必要があると考えられていることにも、注意を要します(最高裁判所昭和33年7月25日判決)。

なお、統合失調症以外の離婚原因があれば、離婚が認められる可能性があります。
例えば、統合失調症の配偶者からDV(配偶者暴力)やモラハラ(モラルハラスメント)の被害を受けている場合には、上記⑤の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するものとして、離婚が認められる可能性があるでしょう。
過去の裁判例には、統合失調症の妻について、症状の程度からすると上記④の「回復の見込みがない強度の精神病」には該当しないものの、妻の粗暴な言動等により夫婦関係の破たんを招いたと認定し、上記⑤の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するものとして、離婚を認めたものがあります。

離婚の可否は事案ごとにケースバイケースですので、ご不明のことがありましたら、専門家である弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

3 統合失調症の配偶者との離婚手続

配偶者と離婚をするための手続は、まずは夫婦同士で離婚の協議(話し合い)をし、協議がまとまらなければ調停を申し立て、調停でも合意に至らなければ訴訟を提起して解決を求めるという3段階の手続となります。

統合失調症の配偶者との離婚では、病状が重度であればあるほど、協議(話し合い)による離婚が困難である場合が多いと考えられます。
その場合には、調停あるいは裁判の手続により解決を図ることとなります。

そして、統合失調症の配偶者に意思能力(有効に法的な意思決定を行うだけの判断能力)がない場合には、調停における合意形成も不可能であるため、初めから訴訟を提起していくこととなります。
しかし、意思能力のない配偶者は、自ら訴訟の手続を行うことができず、弁護士に依頼することもできません(自ら有効に訴訟の手続を行うにも、弁護士に依頼するにも、意思能力があることが必要です)。
そこで、まずは、意思能力のない配偶者に成年後見人を付けてもらうように、家庭裁判所に後見開始の審判の申立てをし、選任された成年後見人を相手に離婚を求める訴訟を提起することとなります。
なお、ご自身が配偶者の成年後見人に選任されている場合には、離婚を求める訴訟の相手方は成年後見監督人となります。

統合失調症の配偶者との離婚手続についてご不明のことがありましたら、専門家である弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。

4 弁護士にご相談ください

以上のように、統合失調症の配偶者との離婚には、独特の困難な問題があります。
統合失調症の配偶者との離婚についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、離婚問題に詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
当事務所では、離婚問題に関するご相談・ご依頼を多数お受けしており、解決実績も豊富にございます。
ぜひ一度、お気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。