夫婦の一方または双方が司法書士、行政書士、税理士、社会保険労務士などの士業である場合には、離婚をするにあたって特有の問題があります。
このページでは、士業の離婚で特に気を付けるべきポイントをご紹介させていただきます。
1 財産分与の割合
一般的な夫婦が離婚をする場合には、財産分与の割合は2分の1ずつとなるのが原則です。
しかし、夫婦の一方が士業であり、収入額が数千万円あるいはそれ以上となる場合には、財産分与の割合が修正されることがあります。
例えば、プロパンガス販売の経営者の事案ですが、財産分与の割合が70:30とされた裁判例があります。
また、医師の事案ですが、年収が1億円を超え、保有資産が1億円を超えるケースで、妻への財産分与が2000万円しか認められなかった裁判例があります。
2 財産分与の対象
士業は高収入であることが多いため、様々な財産を保有しているのが通常です。
そのため、財産分与が離婚にあたっての大きな争点となることが少なくありません。
①ゴルフ会員権
士業の中には、ゴルフを趣味としている人も多く、ゴルフ会員権を持っていることがあります。
ゴルフ会員権は、財産的価値を有するものもあり、財産分与の対象となる可能性があります。
②生命保険
士業の中には、もしもの時に備えて、生命保険に入っていることも多いです。
生命保険の解約返戻金は、財産分与の対象となります。
③株式
士業の中には、資産運用の一つとして株式を保有している人もいると思われます。
株式も、財産的価値を有するものとして、財産分与の対象となります。
④自動車
自動車も、財産分与の対象となります。
自動車ローンが残っているとか、年式が古いなどの自動車には、財産的価値がないこともあります。
しかし、士業の中には、高級車を保有している人も少なくありませんし、年数が経過しても価値のある自動車もあります。
⑤預金
預金も、財産分与の対象となります。
士業は高収入であることが多いため、相当額の預金があることが多いでしょう。
3 士業の退職金
士業には退職金がないとお考えの方もいらっしゃいますが、士業法人に所属している場合には退職金が出ることがあり、個人事業主として小規模企業共済等の保険に加入している場合があります。
このような場合には、退職金や小規模企業共済等の保険金が財産分与の対象となります。
4 士業法人の財産
夫婦の一方が司法書士法人、行政書士法人、税理士法人、社会保険労務士法人などの士業法人を経営している場合、士業法人と士業個人とは法律上別の存在であるため、法人が所有する財産は財産分与の対象となりません。
ただし、士業個人が所有する不動産や金銭などの財産を士業法人に貸し付けているとか、士業法人の出資持分を有することなどがあります。
このような場合には、不動産、貸付金、出資持分は士業個人の財産ですので、財産分与の対象となり得ます。
また、士業法人が利益を出しているとか、資産を保有しているなどの場合には、出資持分の評価額が高額となることがあります。
このようなケースでは、士業法人の出資持分の評価と分与をどのように行うかについて、複雑な問題となることがあります。
5 士業が配偶者を雇用している場合の問題
士業事務所・士業法人を経営している人の中には、配偶者を事務職員などの従業員として雇用している場合があります。
労働法の理屈上は、離婚することを理由として配偶者を解雇することはできません。
しかし、配偶者としても、離婚後に引き続き雇用されることを希望しないことが多いと考えられます。
士業が配偶者を雇用している場合には、離婚協議を行う際に、雇用・退職の問題についてもきちんと話し合っておくことが大切です。
6 士業の年収
士業の年収は、保有する資格の種類、事業規模、立場(勤務・経営)などにより、大きな開きがあります。
また、給与を受け取っている士業でも、給与以外の収入があることも多いです。
そのため、年収の把握が大きな問題となることがあります。
年収の額は、養育費・婚姻費用を算定する際に必要な情報です。
7 弁護士にご相談ください
以上のように、夫婦の一方または双方が司法書士、行政書士、税理士、社会保険労務士などの士業である場合には、離婚をするにあたって特有の問題があります。
ご自身のご判断だけで離婚の話し合いを進めることにはリスクもありますので、まずは専門家である弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
当事務所の弁護士は、これまでに、離婚に関連する数多くのご相談・ご依頼をお受けして参りました。
離婚の解決実績も豊富にございますので、どうぞ安心してお気軽にご相談ください。