配偶者に無断で子どもを連れて家を出て別居を開始した場合、配偶者の側から違法な子どもの連れ去りや誘拐だと主張されて、トラブルに発展するケースもあります。
そこで、子どもを連れて家を出る形で配偶者と別居する際には、事前に配偶者とも協議しておくことが望ましいところです。
一方で、配偶者に無断で子どもを連れて家を出て、別居を開始することが直ちに違法なものと評価されるわけではありません。
例えば、配偶者が子どもに対して暴力を振るっていると認められるケースや、子どもがまだ幼くご自身が主に監護を行っているため、子どもを自宅に置いて出ていくわけにはいかないと認められるケースがあります。
このようなケースでは、やむを得ず配偶者に無断で子どもを連れて別居を開始したとしても、違法とまでは評価されないのが通常です。
また、子どもを連れて家を出ることを配偶者に告知することで、子どもの奪い合いが発生することが懸念されるケースや、配偶者との離婚話の際に「家を出ていくなら子どもを置いていけ」などと言われるケースもあります。
このようなケースでは、事前に配偶者と協議することが難しく、子どもを主に監護している側が、配偶者に無断で子どもを連れて家を出ることはやむを得ないと言えるでしょう。
ここで、やむを得ず配偶者に無断で子どもを連れて別居を開始する場合には、後になってから違法な子どもの連れ去りや誘拐であると評価されないように、できる限りの対策を取っておくべきです。
違法な子どもの取れ去りや誘拐であると評価されると、子どもの監護者の指定や子どもの親権者の決定の判断において、不利な要素となるおそれがあるためです。
例えば、配偶者からDVを受けている場合や、子どもに対する暴力が存在する場合には、別居前に警察に相談しておいて、別居後にも警察に報告しておくとか、別居後すぐに(あるいは別居時に置手紙を残して)配偶者に対して子どもが安全な環境にいることを伝えるなどの対応が考えられます。
以上のように、配偶者に無断で子どもを連れて家を出ることは、直ちに違法と評価されるわけではありません。
一方で、違法な連れ去りや誘拐であると評価されてしまうと、後々の子どもの監護者の指定や子どもの親権者の決定の判断にも、悪影響が及ぶリスクがあります。
そのため、やむを得ず配偶者に無断で子どもを連れて家を出る場合には、事前に弁護士にご相談いただいたうえで、慎重に対応されることをお勧めいたします。