当事務所では、離婚に関連するご相談・ご依頼を多数お受けしておりますが、その中でも、DV(家庭内暴力、ドメスティックバイオレンス)の被害に遭われた方のご相談・ご依頼案件は少なくありません。
今回のコラムでは、DVと離婚の問題について取り上げたいと思います。
DVの被害に遭われた方は、肉体的・精神的に多大なダメージを受け、まずはご自身の実家やご親族等の自宅、あるいはシェルターなどに身を寄せるという行動を取られると思います。
しかし、その後も、加害者である配偶者からの今後の暴力から身を守っていかなければなりません。
今後のDV被害を防止するための法的措置として、DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)に基づく保護命令を申し立てることが考えられます。
保護命令の内容としては、①DV被害者への接近禁止命令、②同居している住居からの退去命令、③DV被害者への電話等禁止命令、④未成年の子への接近禁止命令、⑤DV被害者の親族等への接近禁止命令があります。
保護命令は、DV被害者が裁判所に発令の申立てを行って、発令の要件を満たすものと判断された場合に加害者に対して発令されます。
加害者が発令された保護命令に違反した場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
裁判所に保護命令の発令を求めるための要件は、「夫婦関係の継続中に身体への暴力または生命・身体への脅迫を受けた者が、今後、配偶者から身体的暴力を振るわれて生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きいとき」となります。
また、手続面については、事前に配偶者暴力相談支援センターまたは警察署(生活安全課等)に相談に行くなどした上、保護命令申立書を作成し、所定の添付書類や証拠資料とともに裁判所に提出します。
証拠資料としては、DV被害者の日記や陳述書(被害状況や経緯等を記載したもの)、医師の診断書、写真・動画・録音・メール等の記録などが考えられます。
その後、1~2週間程度の間に申立人(DV被害者)の審尋(事情聴取)、相手方(加害者)の審尋が順次行われ、保護命令を発令するか否かの判断が下されます。
なお、審尋の日程については、申立人と相手方とで別日程が設定されるため、お互いに顔を合わせることはありません。
また、緊急性が高いと裁判所が判断した事案については、審尋の手続を省略して保護命令が発令されることもあります。
このような保護命令の手続については、配偶者からの今後の暴力の危険がある中で、迅速かつ確実に進めていくことが必要となります。
まずはお早めにDVと離婚の問題に詳しい弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。
また、保護命令の手続に不安や負担を感じるようであれば、弁護士に対応を依頼することもご検討ください。
また、保護命令が発令されたケースはもちろん、保護命令の申立てまでは不要と考えられるケースであっても、配偶者との離婚に向けた手続を進めていかなければなりません。
離婚に向けた手続としては、離婚協議、離婚調停、離婚訴訟の3段階が考えられますが、DVの被害に遭われた方においては、配偶者に対して離婚の話を持ち掛けることでさえ、大きな危険や負担が伴うものです。
DVのケースでは、そもそも離婚協議を試みることが現実的ではなく、初めから離婚調停を申し立てていくべき事案も多いです。
そして、離婚の事案では、離婚をするか否かのほかにも、子どもの親権者、子どもとの面会交流、養育費、財産分与、慰謝料、婚姻費用などクリアしなければならない課題が多々あることが多く、DVのケースでは特に慰謝料の請求を伴うのが通常ですから、配偶者との間で揉めやすい類型であると言えます。
DVのケースは離婚の中でも複雑な事案であると言えますから、ご自身だけで対応を検討されるのではなく、DVと離婚の問題に精通した弁護士にまずはご相談いただければと存じます。
また、離婚に向けた手続を安全かつ確実に進めていくためには、弁護士に対応を依頼することをご検討いただくのがよいでしょう。
当事務所では、これまでに、DVと離婚の問題に関するご相談・ご依頼を多数お受けして参りました。
保護命令や離婚協議・離婚調停・離婚訴訟の各手続や、DVによる慰謝料の問題について、豊富な解決実績がございます。
DVの被害に遭われた方は、お気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。
(弁護士・木村哲也)