過去の不倫・浮気について、配偶者から許しを得ているため、「不倫・浮気をした者(有責配偶者)からの離婚請求は認められない」という配偶者の主張が認められず、離婚できる可能性があります。
ただし、法律上の離婚原因が存在することが前提です。
また、もし有責配偶者であるとされた場合であっても、事情により離婚の請求が認められる余地はあります。
なお、夫婦がお互いに離婚に同意しているのであれば、法律上の離婚原因がなくても、離婚をすることができます。
不倫・浮気など離婚の原因となる行為をした側のことを、有責配偶者と言います。
有責配偶者からの離婚の請求は、原則として許されておらず、厳格な要件を満たす場合にのみ、離婚が認められるというのが通常の取り扱いです。
しかし、過去の不倫・浮気について、配偶者から許しを得た場合には、有責配偶者からの離婚の請求と評価することはできないとして、不倫・浮気をした側からの離婚の請求を認めた裁判例があります(東京高等裁判所平成4年12月24日判決)。
一旦許した不倫・浮気の事実を、後日再び問題とすることは、フェアではないと考えられているからです。
ここで、配偶者からどの程度の許しを得れば、有責配偶者からの離婚の請求と評価されなくなるのかという問題があります。
不倫・浮気を許したと評価し得る配偶者の発言があったからといって、常に有責配偶者からの離婚の請求と評価されなくなるわけではなく、発言内容については「言った、言わない」の争いになりがちです。
この点、不倫・浮気の事実を認識したうえで夫婦関係を継続させることを合意し、夫婦生活が一定期間継続されたのであれば、有責配偶者からの離婚の請求と評価されなくなる可能性が高いでしょう。
ただし、有責配偶者からの離婚の請求ではないと評価される場合でも、法律上の離婚原因が存在することが、離婚の請求が認められるための前提となります。
法律上の離婚原因は、民法770条1項に定められています。
①配偶者に不貞な行為があったとき、②配偶者から悪意で遺棄されたとき、③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき、④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき、⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき、です。
また、仮に有責配偶者からの離婚の請求と評価される場合でも、①夫婦の別居期間が相当長期間に及ぶこと、②夫婦間に未成熟の子どもがいないこと、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に過酷な状態に置かれないこと、という条件を満たせば、離婚の請求が認められます。
なお、夫婦がお互いに離婚に同意しているのであれば、法律上の離婚原因がなくても、問題なく離婚をすることができます。