離婚の訴訟を行うための前提
まず、離婚の訴訟を行うためには、法律上、離婚の調停手続をした後でなければできないこととされています。
そのため、離婚の訴訟を行うにあたっては、離婚の調停手続で話し合いがまとまらなかったことが前提となります。
離婚の調停手続は、当事者が、裁判所から委託されている調停委員を介して話し合う手続ですが、離婚の訴訟は、当事者が書面での主張と証拠の提出(主張・立証)をし、裁判官が判断する手続です。
裁判による離婚は、法律上離婚できる要件が定まっていることから、この要件に該当することを中心に主張・立証していきます。
(1)裁判所へ訴え提起
離婚の訴訟を提起するには、当事者である夫または妻の住居地を管轄する家庭裁判所に、訴状を提出し、訴訟を提起することになります。
離婚の訴訟を提起すると、裁判所が、原告(訴訟を提起した人)の都合を確認した上で、第1回の期日を決定します。
期日が決まると、裁判所は、被告(訴訟を提起された人)に、期日呼出状と訴状を送達します。
(2)被告からの反論を記載した答弁書の提出
被告は、期日呼出状と訴状を受け取ったら、原告の主張に対する反論を記載した答弁書を作成し、裁判所に提出しなければなりません。
(3)期日
第1回目の期日では、原告が作成した訴状の陳述と、被告が作成した答弁書の陳述、次回の期日までに準備することの確認をして、次回の期日を決めることになります(通常、次回の期日は、約1か月後になることが多いです。)。
なお、訴状や答弁書について「陳述」すると説明しましたが、実際に書面を読み上げるのではなく、裁判官が「原告は訴状を(被告の場合は答弁書を)陳述でよろしいですね?」と問いかけてくるので、「はい」と答えるだけです。
その後、大体1か月ごとに期日が行われ、審理されていくことになります。審理のおおまかな流れは以下のとおりです。
①争点の整理
当事者の主張する事実を確認し、何が争われていて、何が争われていないのか、事実を整理します。
②原告と被告からの証拠の提出
争いがある点について、当事者のどちらの主張が、事実と合致しているかを判断するために、原告と被告が、それぞれ証拠を提出します。
③それぞれの主張と証拠が出そろうまで①、②を繰り返す
裁判官が、原告の主張する離婚原因が実際に存在するか判断できる程度まで①、②が繰り返し行われることになります。
④証人尋問、本人尋問
必要があれば、証人(離婚原因についての事実を知る第三者)に出廷してもらい、法廷で離婚原因に当たる事実を述べてもらう手続が行われます。
また、原告、被告双方の言い分を、裁判官に直接伝えるための手続として、当事者本人の尋問手続が行われます。
なお、離婚の訴訟はプライバシーにかかわるものであるため、一定の要件を満たせば、証人尋問・本人尋問を非公開で行うことができます。
※裁判所は、原告が、離婚の訴訟において、養育費や財産分与等についての判断も求めている場合、これに関する事実の調査をすることができ、家庭裁判所調査官による事実の調査や、関係機関への照会が行われることがあります。
(4)離婚の訴訟の終結
離婚の訴訟が終結するパターンとしては、以下の3つが挙げられます。
①判決手続による終結
法律上定められている離婚の要件を満たすか否かを裁判所が判断します。
離婚を認める判決が確定すると、法律上、離婚が成立することになります。
②和解による終結
裁判の過程で、当事者が和解に至った場合には、判決によらずに訴訟は終了し、離婚の効果が生じます。
和解により終結する場合、親権者の指定は必ず行われるものの、原告が、養育費や財産分与等についての判断も求めている場合、これについて離婚することと併せて合意する必要はありません。
合意に至っていないものに関しては、引き続き審理・判断されることになります。
③被告の認諾による終結
離婚の訴訟において、親権者の指定の必要がなく、原告が養育費や財産分与等の判断を求めておらず、単に離婚することのみを訴訟で争っている場合に、被告が、原告の主張を全面的に認めたとき(請求の認諾)は、判決によらずに訴訟は終了し、離婚の効果が生じます。
これらのいずれかのパターンで離婚の訴訟が終結した場合、離婚の効果は生じますが、戸籍が自動的に再編されるわけではないので、終結後10日以内に本籍地または住所地の市区町村に離婚届を提出する必要があります。
離婚の訴訟にかかる期間
離婚の訴訟にかかる期間は、争われている事実や、どのような証拠があるかによりますが、早ければ半年程度で終結します。
もっとも、場合によっては、2年から3年ほどかかることもあります。
弁護士にご相談ください
ご自身で離婚の訴訟を進めようと考えられている場合であっても、疑問点や不安な点があれば、一度、離婚問題に精通した弁護士にご相談されることをお勧めします。